2018年6月 読んだのまとめ

 

 

3か月続いたので来月も続けられれば3日坊主ならぬ3か月坊主を回避できる。

 

 

 ●宮廷神官物語 一 (榎田ユウリ

陰謀渦巻く宮廷を舞台とした(1巻終わりの方でようやく宮廷に辿り着くけど)アジアンファンタジー。そういう点では「守人シリーズ」を彷彿とさせる。お約束な展開や先が読めるような展開があったりもしたけど、キャラクター同士の掛け合いが愉快で私はとても気に入った。食欲(主に肉)が凄い神官(女性的な美形)、野生児(美形)、寡黙な男(男前)が旅をするので腐女子にうれしい。

 

●宮廷神官物語 二 (榎田ユウリ

2巻まで読んでようやく元は角川ビーンズから出ていたシリーズだということを知った。装丁って大事なんだな……(ビーンズ版の装丁だったら9割9分手に取ってなかったと思う)今回もわりとお約束的な展開があったけど、姫のくだりは予想外だった。続きが楽しみ。

 

あゝ、荒野 (寺山修司

あゝ、荒野行動」というつまらんギャグを堂々と言いたいがために「あゝ、荒野」に手を出したら、行間から立ち上る「時代の体臭」や男同士の激烈な精神的・肉体的交流を書き上げる寺山修司の筆力ににビビり上がってしまい、サムいギャグのこととかどうでもよくなってしまった。後半のバリカンから新次に対する独白が好き、なにせワタシは腐女子なので。

 

エストニア紀行: 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 (梨木香歩

 家守綺譚のオタクやってるくせに梨木香歩作品を実はほとんど読んだことがなかった。最近静かで丁寧な筆致の本を読みたかったのでちょこちょこ読み始めたら、ぴったりはまった。本にも読み手毎の旬がある。高校の頃現代文の先生が「買ってみて面白くない、好きじゃない、合わないと思った本でも時間が経つと不思議としっくりくるものだ」と言っていたのを思い出した。こういうことだったのね。
 読んでいて、自然や人に丁寧に向き合っている筆者の考え方が心地よかった。遠くに行きたくなった(割といつでも遠くに行きたがってはいる)。留学中に思ったことと似たようなことも書かれてあって(留学先も旧ソ連の「辺境」だったので)首を縦にふりふり読んだ。他のエッセイも読んでみたい。

 

●不思議な羅針盤 (梨木香歩

 エッセイの一つ一つに頷いたり、感心したりしているうちに一冊読み終わってしまった。飼い犬の話やプラスチック膜の話にかなり共感した。他にも、自分がうまく言葉にできないでいる考え方をばちっと文章にしている章は「そうそう、これだ!」と呼んでいてうれしいようなすっきりしたようなちょっと悔しいような気持ちになった。解説や本文中にもあるように、「五感」が開かれた人だなと思う。こういう風に豊かな感受性(か弱な繊細さという意味ではなく)を持って生きていきたいと思った。そう感じたことを思うと、表題が驚くほどしっくりきている。

 

●友情 (武者小路実篤

主人公は杉子のことを褒めたたえるけれどそれは理想化されたもので(それを杉子自身も気付いている)、偶像に対する愛であればそれは嫌だろ……と杉子に対する同情でいっぱい。そして私は腐女子だから大宮と野島の友情、そいつがしかと胸に響いたぜ! うーん、男の男に対する信頼や嫉妬心やそれを上回る尊敬やこれらすべてを塗りつぶす罪悪感は滋養に良い。

 

●宝石商リチャード氏の謎鑑定 紅宝石の女王と裏切りの海 (辻村七子)

第2シリーズということで、中田くんが世界に羽ばたいていく様子が心強い。そして腐女子もすくみあがってしまうほどのお約束的ボーイズラブ展開。個性が異常に付与されたモブおじさん(それはもはやモブではない)の毒牙にかかる美貌の男! 戸惑わずにはいられない! エピローグの箱庭的空間が心地よかった(次巻に繋がるような不穏な出来事はあったけど)。

 

 

 

今月の腐女子の心に刺さったで賞は「あゝ、荒野」、面白かったで賞は「不思議な羅針盤」「エストニア紀行」でした。

 

 

 

 

おしまい