沿ドニエストルのパトカーに乗せられた話

未承認国家沿ドニエストル共和国に行ったらパトカーに乗りました。

 

沿ドニエストル共和国とは、モルドバ共和国を流れるドニエストル川ウクライナ側を領土と宣言している国連未承認国です。

これはモルドバソビエトからの独立を宣言した際にその親ルーマニアっぷりを嫌がったロシア系住民が別個に独立を宣言したためこうなったらしい。沿ドニエストル地域をめぐってモルドバとの間で紛争が起こったりもした。

 

こうした背景からしてバリバリの親ロシア派で、そしてバリバリの“ソビエト懐古”とでも言うのでしょうか。なんとワールドワイドウェブには「最後のソ連」なんてキャッチーで力強いワードが転がっている。俺が、俺たちがソビエトだ。

 

なお、沿ドニエストルにはモルドバ以外からのアクセス方法もありますが、モルドバからの出国の時に不正入国として逮捕されたくないのでモルドバからミニバスで沿ドニエストル首都ティラスポリに向かいました。

ちなみに、ウクライナ沿ドニエストルモルドバまたは沿ドニエストルモルドバ、という経路だと「モルドバの入国審査を受けていない! 沿ドニエストルモルドバの一部なんだから不正入国だ!」ということで出国できなくなるそう。

 

さて、そんなこんなでモルドバに着いて沿ドニエストルに向かいます。ミニバスは中央バス乗り場から出ていました。ふらふら歩いているとおっちゃんが「ティラスポリ!」と声をかけてくれたので近くの切符売り場でお金を払って乗り込めばあとは国境まで寝るだけでした。36.5レイだから当日のレートで188円くらい。安い!

 

なおミニバスのおっちゃんには英語はまず通じないのでロシア語(かモルドバ語)で意思疏通するしかないです。「座って座って!」「降りて!」「これ君の鞄? 国境警察に中身見せて!」「君マルシュルートカで来たからこっちのゲート通って!」くらいしか言われないので別にロシア語わからなくても問題ないと思います。ダーダー言っとけばどうにかなる。ダーダー言っとけば意思疏通できる様を個人的にダー様コミュニケーションと呼んでいるんですがダージリン様はイギリスじゃんね。

 

さて、そんなこんなで沿ドニエストル検問所です。モルドバ沿ドニエストルを国家承認していないのでモルドバ出国の手続きはありません。あるのは賄賂要求で悪名高い沿ドニエストル入国審査だけです。

しかし「今日ここにもどってくるのか」とだけ聞いて賄賂はなし。やったぜ!

 

そしてこれをくれました。


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パスポートにスタンプを押さないんです。何故でしょう。国連から承認を受けていないからでしょうか。ともかく、ふたたびミニバスに乗っていざ行かんティラスポリ

 

マルシュルートカの終点は鉄道駅。なお、鉄道駅周辺は何もないので、一番賑わっている市場の辺りで降りるのがおすすめです。やたらと緑色の建物がある人通りの多いところが市場らしい。

 

私はなにも知らなかったので鉄道駅から歩いて来た道を戻りました。荷物を背負って歩くのは正直しんどかったですがティラスポリが非常に小さい街であることが幸いし、すぐに市場まで到着。

しかしさすがにもう疲れた。適当にバスを拾ってバス停まで行こうとバスのおっちゃんに「バスターミナルに行くか?」と聞いたところ、よくわからない固有名詞を聞かれたので「うん、とりあえず向こう(前方方向)にあるバスターミナルまで行きたい」と言って着席。

 

しかしそもそもこれが間違いだったのだ。

 

しばらく乗ると「ついたよ!」と同乗者がめちゃめちゃ声をかけてくる。なるほどと思い外に目をやったらバスターミナルとは程遠い駐車場だった。周り、なにもない。バス、一台もない。

辺りは道も狭く、店も民家もなく、バス停も遠く離れておりタクシーもない。さっそく雲行きが怪しくなってきた。キシナウ行きのバスに乗りたいの、バスターミナルはどこ? バスターミナルに行くんじゃないの? と聞いたけどバスのおっちゃんは「キシナウ行きのバス? バスターミナル? 行かんがな!」とおっしゃる。うーん、あの謎の固有名詞はこの変な駐車場のことだったのか。ダー様コミュニケーションは危険だ。

 

すると運転手のおっちゃん、今度はとにかく座れとおっしゃる。しかしバス停には行かないんだそうだ。どうなることやらと思っていたらバスが停まり、後方から警官が現れ、ついてこいとのこと。なんだかヤバイ感じがする。変な汗が出てきます。というかなんで警官がバスに乗っているんだ。これが沿ドニエストルスタンダードか。

 

さて、降りた先にはパトカーが。助手席に座らされる。パトカー! 生まれてはじめて乗ったぞパトカー! 日本でも乗ったことないぞパトカー!

 

まずは警察署につれていかれる。私は別に悪いことしてない(はずだ)から堂々たる車内待機。そして背中にはびっしりと汗。なにせパトカー初体験だったので……

 

さらに次には警官の家に行って奥さんにキシナウ行きのミニバス発着場の位置を聞く。奥さん大変美人でした。しかし奥さん、キシナウ行きのミニバス乗り場はわからないとのこと。つまり彼女はミニバスで沿ドニエストルを出たことがない! おそらく車で今まで行き来してたんでしょうか。キシナウにたくさん沿ドニエストルナンバーの車を見かけたし。

 

色々と相談した末、停留所最終地点、つまり鉄道駅の前から発車していることが判明。そう、私はもと来た道を戻ればいいだけだった……そうしてそのままパトカーでバス停まで乗り付けましたとさ。

さらには警官がチケット売り場まで案内してくれました。優しい! 親切! そしてそのままさよなら~本当にありがと~、でおしまい。

 

警官とパトカーの中でどこでロシア語勉強したの~子供の写真かわいいね~とか話してましたがとてもいい人でした。ちょっと強面だったけど……名前聞けばよかったと今更ながら後悔してます。

 

というわけで、沿ドニエストルの警官はとっても親切なので沿ドニエストルに行ってぜひ警官に自己責任でお世話になってみてください。変な汗を大量にかきましたがわりとパトカーの乗り心地はよかったです。